「ハウツー」を学んだら、研究計画書は書けるか?

Aug 15, 2022 | 研究計画書 | 0 comments

Written by Bo

 研究計画書の書き方、いわゆるハウツーを解説する本が少なくありません。研究テーマ、研究背景、研究目的、研究内容、研究方法、研究意義、参考文献など、大体このような基本構造で解説されています。

 読むときは、確かにそうだろうなあと分かったのですが、実際に研究計画書を書く際にいろんな問題が出てきます。読んでいてもやっぱり書けないと実感する人が多くいるのではないでしょうか。なぜそうになるのか、どうすればいいか、今回そういう話をしたいと思います。

まず結論から言います。ハウツーや書き方だけを学んで、研究計画書は書けません。

 なぜそう言い切れるのでしょうか。ハウツーは「こういう手順でこういうふうに書いてください」ということで、「なぜそういう手順でそういうふうに書けばいいのか」という背後にあるロジックをちゃんと説明していないです。ここで言うロジックは、論の進め方と言い換えてもいいです。この「論の進め方」こそ、研究計画書の成否に一番関わっているものになります。

以下では、例を結びながら、研究計画書の基本構造の一つ、「研究背景」の作成に当たって、その考え方を巡って解説していきます。

 例えば、中国の環境汚染問題が深刻しつつあります。多くの学生さんは、研究背景の部分に中国の環境汚染の現状について述べます。これは理解しやすいですね。中国の環境汚染問題を研究しますので、当然中国の環境汚染問題の現状を述べる必要があります。

 実は、それが大間違いです。汚染現状を述べるのは良いですが、それはあなたのやろうとする研究の「リサーチ問題(リサーチクエスチョン:RQ)」ではありません。ここは極めて重要です。何度も強調していいぐらい重要です。もう一回強調させてください。中国の環境汚染上の「問題」は、あなたのやろうとする研究の「問題」ではありません。

 この2つの問題についてよく味わってください。研究背景の部分に書くべきものは、どっちでしょうか?当然、あなたのやろうとする研究の問題、を書くべきですね。なぜならば、汚染現状はインターネットで探していくらでも出てきますので。あなたはわざわざ研究計画書の中に書く必要がありません。一文章だけで良いです。

では、何を書けば良いのか、リサーチクエスチョン(RQ)は何でしょうか。

 例えば、環境汚染が深刻していく中で、あなたは「中国の人々はどのような環境意識を持っているのか?」ということを知りたいのであれば、中国人の環境意識に関する先行研究をまず探していくわけです。

 先行研究の中に、中国の人々の持っている環境意識について大体書いてあると思います。その場合に、「環境汚染が深刻していく中で、中国の人々はどのような環境意識を持っているのか?」は、あなたの「リサーチクエスチョン(RQ)」と成り立ちません。なぜなら、すでに研究されたわけですから。

 しかし、あなたはたくさんの先行研究を読んだ後、一つ面白い現象を発見しました。「先行研究のいずれも、人々の環境意識が高くなったと述べていますが、実際中国の環境汚染現状が依然として厳しい状態である」ということを、あなたは発見したとしよう。その現象が生じる原因の一つとして、あなたは以下のように考えたとしよう。

 「人々の環境保護の意識が高まるにもかかわらず、その意識が必ずしも自らの環境保護行動に繋がると限らない。」

 これについて、あなたはもう一回先行研究を調べました。しかし、今回は上記の問題を答えられそうな研究が見つかりません。そのため、あなたは「人々の環境意識と環境保護行動と、どう関係しているのか」という問題をさらに掘り下げるため、大学院で専門的に研究するように考えはじめたわけです。

 つまり、あなたのやろうとする研究のリサーチクエスチョン(RQ)は、「人々の環境意識と環境保護行動はどう関係しているのか?」という問いです。もし、ここまで理解できないなら、何度も以上の文章を読んでください。極めて重要ですから。理解してから以下を進めてくださいね。

時にはリサーチクエスチョン(RQ)が見つかっただけで、まだ足りないです。

 もっと深く考えましょう。あなたはこのリサーチクエスチョン(RQ)に対して、どの学問領域(専攻分野と考えても構わない)で取り組みたいですか?ここからは少し難しくなりますので、落ち着いて読みましょう。

  • 例えば、「人々の環境意識と環境保護行動はどう関係しているのか」という問いに対して、あなたは「人間の行動」の面から取り組みたいと考えるのであれば、心理学の学問領域になります。
  • もし、「人々の環境意識と環境保護行動はどう関係しているのか」という問いに対して、あなたは、人々の環境意識と環境保護行動の不一致は、社会的約束力が足りないのが原因だと、もしくは、環境保護行動をしても人々の利益に繋がらないのが原因だと考えるのであれば、それは社会学もしくは数理社会学の学問領域になるかもしれません。
  • もし、「人々の環境意識と環境保護行動はどう関係しているのか」という問いに対して、あなたは、学校の環境教育がちゃんと機能していないのではないかと考えるのであれば、今回、教育学の学問領域になるはずです。

このように、どのような学問領域でそのリサーチクエスチョン(RQ)と戦うのか、ということも考える必要があります。

それで「研究背景」を書く際に以下2つのポイントを押さえてほしいです。

  1. リサーチクエスチョン(RQ)
  2. どのような学問領域でリサーチクエスチョン(RQ)を解明しようとするか

 この2つさえ確定したら、もう研究計画の70%が終わっていると考えてください。後の研究内容とか方法とか、簡単です。時には、この2つさえ確定できれば、研究内容と方法はある程度決まっています。

 以上を以て、よくお分かりになりましたと思いますが、

「書き方」ではなくて、「辻褄の合った論を展開していくこと」が大事です。論の進め方を身につけたら、あなたはもう自由だと。

いつも応援しています。ご幸運を。

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